同窓会
2016年の11月、その日は私の中学校の同窓会でした。
なぜだか、私は珍しくワンピースを着て、赤い小さなイヤリングをして、とても心弾ませて出かけました。
数十年ぶりに会える友人たちの事を、楽しみにしてこの2週間を過ごしてきました。
ほんの2週間前に、高校の同窓会があり、そこで同じ中学卒業のTさんから声をかけられ、「中学の同窓会の手紙に、あなたが不明者の欄に載っていたわよ。」と教えられたのです。彼女に教えられたとおりに、幹事に連絡することができ、この日を迎えたのです。
私の実家は他県に引っ越しており、高校卒業後は無縁の地となっていました。
また、忘れてしまい顔を見てもすぐには思い出せない人も、アルバムを見せてもらい、思い出しました。
なぜだか、私の持ち物にはアルバムはなく、実家に置いてきたままになっていたからです。
それにしても、あれから数十年経つというのに、アルバムの中の顔ぶれは不思議と忘れていないものですね。
宴もたけなわとなり、各自の近況報告も終わりになったころ、私は離れたテーブルに座っているある人の目に釘付けとなりました。
お互いに視線を合わせて、無言のままでした。その間離れたテーブルの間に道ができたように感じた不思議な出来事でした。またその間、誰もその道を横切る人もいませんでした。
相手は、私の好きだった人で、私達はただ黙って見つめ合いました。
その後、閉会の辞が述べられて宴会は終了となったので、私はドアの近くに置いてあるコートを取りに行きました。
そして、コートに手を伸ばしたその時に、後ろで声がしたのでした。
「○○です」と短く。
その時に、私はその場がキラッと一瞬光り輝き、後頭部に電気が走ったような気がしました。それと同時に急激に胸が高鳴りました。
私は満面の笑みで振り返ると、見つめ合った彼が笑顔でそこにいました。
「○○から来ました」と彼は朴とつな言い方をして、私の心は一気に跳ね上がってしまいました。
私はおかしなことに、名札を見せて、「○○です。」と旧姓を言いました。
彼は「今は○○さんというんですね。」と私の名札に書かれている現在の名前を言ったのです。
そして、おかしなことを私は更に話たのです。
「以前、O君の事、検索した事があるのよ。そうしたら○○市で見つけたわ。」
と言ったとたんに、O君はパァーっと顔が輝き、とても喜んでいるふうでした。
「でもね。それが本当にO君かどうかはわからなかったのよ。」
「それは僕です。他に同姓同名の同業者はいないようですから。」
と言っていました。
そこへO君の後ろから男性が声を掛けたので、私は宴会場をでて別の同窓生との会話を楽しみました。
その後、別のお店に行くことになり、私は友人の一人と一緒に行きました。
店に入るとO君も奥の椅子に居ました。
私と友人は別のテーブルに座ってみなとおしゃべりに興じ、9時近くになったので遠方の私はそろそろ失礼しようと友人に話かけると、女性の殆どが席を立ち、それぞれの支払いをし始めました。
私はO君のところに行き、「お元気でね、また逢いましょう」と言い右手を差し出すと、O君はわざわざ立ち上がって、握手してくれ、「今日はどこから来たの?」と聞かれたのです。私はそこから電車で1時間余りかかるところに住んでいたので、その市を告げると、「ああ、そこなら僕の大学の友人が開業していますよ」と話してくれました。
私はただただ嬉しくてもっと話したくて、その場を離れがたい気持ちで一杯でしたが、家に帰らなければなりません。
ひとり乗った電車で、私の心の中はO君のことで一杯でした。まるで中学生に戻ったようで、我ながらおかしくもありました。
電車の窓にはO君の笑顔が浮かんで見えました。
翌日から、私は思いがけない状態になりました。
まるでつわりのような状態になり、家事をしていると気分が悪くなり、心のどこかで「早く早く」とささやく声がするのです。むかつきはどうしようもなく、すぐにベッドに入ると、そのむかつきは、スッとなくなり彼が思い出されるのでした。
それは不思議なことでしたが、彼の事を夢中になって想像をしては、少ない中学生時代の彼についての思い出を何度も何度も繰り返し、ひとりベッドで笑ってばかりいました。(この様子は、確かに普通ではないです。笑)
とにかく家事仕事がままならない状態になり、それがお正月明けまで続いたのです。
私はその2年前に、救急車で運ばれてひと月入院をしていたこともあって、幸いにも家族は理解してくれていました。
私はその間、毎日あきもせずに、O君との時間を空想の中で楽しんでいたのです。
でも私は「もう若くない。」と自分を諫めるような気持も心のどこかにありましたが、その考えは私の思考にはとどまる事はなく、流れて行きました。
お正月の松の内を過ぎてから、やっと仲良しの友人にメールをしました。
「お布団から出られないでいます。」と。
友人から早速メールが来て、すぐにランチをする事になりました。
そして、私の「初恋の復活」の話を聞いてもらいました。
友人とはありがたいものですね。
「○○ちゃんは、苦労してきたから、きっと神様がご褒美をくれたのよ。」と言って
くれて、お互いに楽しく笑い合うことができました。
それから、すこしづつ私はベッドに居る時間が減っていきました。家事はすこしづつですが、できるようになり、つわりのような苦しさも無くなっていきました。