💓神聖な心の旅路 初恋の復活

 初恋の復活

 

私と彼とは同じ中学校で学びました。

1年生の時に、男子生徒と一緒になって2階の教室の窓から、ノートを破って紙飛行機を作り飛ばして遊んだのですが、片付けもせずにチャイムと同時に席についていて、担任の先生から、「すぐに片づけなさい」と言われて蜘蛛の子を散らすようにして、紙飛行機を拾いにいきました。そのあとで、放課後に残るように言われて、私達は職員室の拭き掃除を言い渡されました。私は紅一点だったので、職員室の前廊下を拭くようにいわれました。半分はもうひとりの男子が拭いていました。

古い木造の、骨ばった板の床を雑巾で拭いていたところ、職員室から出てきた男子がいました。彼は職員室で私達がなぜ拭き掃除をする羽目になったのかを、聞いてきたのでしょう。私の前で立ち止まると、私を覗き込むようにして、笑いながら「君も~?」と言ったのです。

私は、むっとして、彼を見たと思うのですが、彼はすぐさま逃げて走り去っていきました。

彼の走り去る後ろ姿は、今でも鮮明に覚えています。

彼はその後隣のクラスの男子O君だとわかりました。

夏休みの最後の日、私は友達に誘われてプールの開放日になっていたので、でかけました。私は夏休みに泳ぎの補修授業に参加していましたが、他の人に比べるとあまり泳げていませんでした。平泳ぎがまずまずで、クロールや背泳はさっぱりでした。

その日もプールの中程で、立ってしまいました。すると水面を割るようにして、私の目の前に飛び出てきた男子がいました。O君のいたずらでした。彼は大声で笑って、すばやく泳いで逃げていったのですが、その時に私の心に湧き上がった不思議な感情はいまでも忘れていません。なにか彼の事を「知っている、なつかしさ」といった感情だったのです。他の男子とは違い、一緒に遊んだ従兄弟のような親近感を感じて、私はさらにその事に戸惑いを覚えたのでした。

学年が2年になり、私は彼と同じクラスになりました。

彼はクラス委員でした。

ある日の事、下校時に下駄箱の前に生徒が大勢いた時に、男子二人が急に殴りあいの喧嘩を始めたのです。殴る凄い音、怒っている大声、私はこのような光景を目にしたのは、初めてでした。皆と一緒に、おもわず後ずさりをして、その光景にただ驚くばかりで遠巻きにして見ていました。

すると、げんこつで殴り合う二人に「やめろ!」と割って入った人がいたのです。

それが彼でした。それから、私は彼に惹かれていったようです。

これが私の初恋です。

それにしても、何十年も経つ同窓会に出席して、あの初恋の彼に出会った私は、家事もままならない程となり、若くもないのに、娘のようにまるで恋煩いかと思えるような状態となり、またそれを嬉しくてたまらない程、おかしくなっている自分にあきれてもいました。それは本当に、熱に浮かされたように、毎日彼との少ない思い出に浸り、毎日幸せを感じていたのです。

友人との楽しいランチも過ぎて、私はふと彼の連絡先も知らない事、彼にも私の事を教えていないことに、気づきました。

そして、私は思い切って幹事に電話をかけ、それなりの理由を告げて、教えてもらったのです。

そして、思い切って彼に電話をすると、彼は明るく元気でした。そして用事を済ませて、「じゃあ、またね」と言いかけると、「またいつでも、電話して」と言われて、私は身体がふにゃふにゃになってしまいました。

私は「そんな事言われたら、本気にしてしまうわよ。」「いいですよ、いつでも電話して」「わかったわ、じゃあまた声が聴きたくなったら電話するわね」と約束して電話を切りました。

私の心は高みにあがり、どんなに嬉しかったことでしょう。信じられない程、順調に進んでいきました。

それからの私は、スーパーに買い物に出かけると、いつも私の周りに薄い卵型のベールがあることに、気づきました。そして私の胸のあたりにまるで腹話術の人形の頭ぐらいの彼がいるのが見えるのでしたが、全く違和感もなく私と彼は心の中で会話をしながら、スーパーの中で買い物をするのでした。

私がこのような状態になったことを、もう誰にも言うことはできませんでした。もし話をすれば、きっと私の精神を疑うことでしょう。これは普通では起こりえないことですから。(後になってわかったのは、これらは一時的な霊性開花の表れという事です)

 

私はシングルではありませんでしたが、そんなことはちっとも気になることではありませんでした。ただ懐かしい初恋がウキウキと復活しただけでした。

 

その後何回もお互いにメールや電話をしました。たわいのない会話に話が弾み、どういうわけか、近しく感じて誰よりも話やすいと思っていました。そんなある日の夜、私は車で出かけてお店の駐車場に車を止めて、彼との会話を楽しんでいると、なんと私の額のあたりに、映像が浮かんで見えたのです。その映像は、別のタイムラインで起こっているようでした。それは第三の目と言われるものでした。映像は私の皮膚に彼の皮膚が近づいて来て、ピタッとくっついたのです。そして細かい隙間もなくなってしまうという映像だったのですが、その映像の事は、電話中の彼には言いませんでした。

その映像は一瞬の出来事でしたが、とても鮮明な映像だったのです。意味はただ何となくという感じがしていました。

 

また、彼は自分が結婚をしていることを、それとなく知らせるメールもくれました。それでも私の心はもう一直線でした。

そして、私は彼にこう言ったのです。

「私は、卒業して3年後に私はやっとあきらめて初恋の扉をきっちりと閉めたのよ。だけど、あの日声を掛けられて、その扉がパァーっと開いてしまったのよ。しかも長い間扉が閉まっていたので、熟成したシャンパンのように、気持ちが噴出してしまっているわ。どうしようもないのよ。若くはないし、困っているわ。」と正直に話すと、彼は、笑って「いいじゃないですか。」と。

 

また、ある日私は、「どうして私に声を掛けたの?私はあれからおかしくなっているわ。」と言うと「手紙をもらったから。」と彼は言いました。

私には、何の事やら一向にわからずに、またそれを深く聞く気にもなりませんでした。

 

月が変わって、2月に入ってすぐに、私はある駅に用事で出かけ、駅前の電話ボックスに入って彼に電話をしてみました。彼と少し話をして、春に近場の人達で集まるミニ同窓会に彼もくるというので、「じゃあまたその時に、会いましょうね。楽しみにしているわ。」と言って切ろうとすると、彼はいきなり「待てない」と一言いったのです。

その声は私の耳に届くと同時に、私は胸をつかまれたような気分になり、さらに頭までクラクラとしてしまいました。

「また、必ず電話するから、いいの?」「いいですよ。」と。

私は自分に起こっていることに、わけもわからずとにかく水をと、急いでカフェに行き、コーヒーと水を交互に飲んで、深く息を吐き出していたのです。

これって、いったいなんなのでしょう。あり得ない現象を私は体験したのでした。

カフェで休んでから、私は街で楽しみにしていた買い物を済ませて無事に帰宅しました。

 

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